制動確保

■ 制動確保

 ・グランドフォールさせない

 ・壁やテラスに体が当たらないような配慮をする

 ・衝撃力を十分に考慮した確保で確実にクライマーを止める

■ 確保のポイント

 1)クリアランス (空間)

 2)衝撃力の緩和

    落下係数お呼びダイナミック係数をコントロールし、衝撃力を押さえる (流す、ということ)
 
■ 確保でコントロール可能な要素とは何か?

  〇スタティックビレイの場合

   ・墜落者の体重 ⇒ 制御不能
   ・ロープ係数   ⇒ 制御不能
   ・落下係数    ⇒ 制御可能 

  〇ダイナミックビレイの場合
   ・墜落者の体重 ⇒ 制御不能
   ・ロープ係数   ⇒ 制御不能
   ・落下係数    ⇒ 制御可能
   ・ダイナミック係数 ⇒ 制御可能
 つまり流すということ。

※スタティックビレイ 支点ビレイ、鎖場の鎖、ヴィアフェラータなど
※ダイナミックビレイ リード・フォロー ムンターによる確保

■ 落下係数の求め方 (フォールファクター)

             自由落下する距離
 落下係数 =      ------------------
              ロープの長さ

3m落ちても、ロープ長が6mなら、 3/6 = 落下係数2
6m落ちても、ロープ長が12mなら、6/12 = 落下係数2
1m落ちて、ロープ長が12mなら、 1/12 = 落下係数 0.08

ロープの長さはすべて同じ


クライミングでは、常に落下距離よりロープ長は長いので、最大の落下係数は、2より大きくならない。



落下係数2: 通常のクライミング時に起こりうる墜落の最大値
落下係数1: 支点とクライマーの腰の位置が同じ場合
落下係数0: ロープにたるみがなく、張力も生じていない状態。スリップなど

ちなみに、人工壁は、落下係数が0.2~0.3になるように支点が設定されている。このため、人工壁での墜落は、比較的安全視されている。しかし、この感覚を山に持ち込んではならない。

■ 落下係数0のときの衝撃

落下係数0の時は、衝撃の吸収がほぼない。支点の真下に立ち、ロープやランヤードにたるみがない状態で、クライマーの体にかかる衝撃は、体重の2倍。

60kgの人 → 120kgの衝撃 ≒1.2kN
          
■ 人体に対する、落下の衝撃は、どれくらいだろうか?

 例: 体重60kg 高さ3m 
                    インパクトフォース(衝撃荷重)
   自由落下           9kN (ボルダリングなど)
   スタティックビレイの場合  3.7kN
   ダイナミックビレイの場合  2.28kN (ロープを50cm流した場合)

・落下の衝撃のことを、インパクトフォース、と言う。
・人体が耐えうる最大の落下衝撃は、屈強な人で、12~13kNと言われている。
・耐えられない場合、腰椎骨折の危険がある。
・怪我をしないインパクトフォースの最大値は、6kNと言われている。
・ちなみにカラビナのマイナーアクシスでの標準的な耐荷重は、7kNである。

アルテリアより
■ 最終支点にかかる力 ・・・プーリー現象

最終支点には 

 (墜落の衝撃そのもの) + (衝撃の0.7F倍)

の力がかかる。 つまり、

 1 + 0.7 = 1.7

の力がかかる。支点には、およそ倍の強度が必要になる。

■ 墜落係数0であっても・・・

墜落係数0の衝撃がクライマーにかかった場合:
 
・インパクトフォース = 120kg 
・最終支点にかかる力 120kg×1.7= 204kg
・ビライヤーにかかる力 120kg × 2/3 =80kg

インパクトフォースは、ウエクスラーの公式によって、求められる。

ここでは、簡易的に2倍とした。

つまり、墜落係数が1や、2の場合は、80kg以上の力が、ビレイヤー側にかかる。

■ 確保器による制動

確保器によるブレーキ力は、約7~9倍。確保器の種類(巻きつけ角度)にもよる。

ATC 7倍
ATCガイド 8倍
ルベルソ 9倍
ムンター 7倍 ※ロープ径に係らず一定

低めに見積もり、7倍として、30kgの握力があれば、210kgの制動力が得られる。

 30kg握力 × 7倍 = 210kgの制動力

これは、どれくらいのインパクトフォース(墜落時の衝撃)を止める力となるか、逆算すると 1.5倍であるから、

 210kg  × 1.5 = 315kg 

のインパクトフォースを止めることになる。 

■ オイラーの法則

ロープドラッグがあると、オイラーの法則が働き、ロープが流れないだけではなく、衝撃もロープ末端まで伝わらず、ビレイヤーは制動確保することができない。

ドラッグの角度は、90度くらいでも、かなり屈曲に寄り、ロープの衝撃吸収性能は、疎外されてしまう。

墜落の衝撃は、すべて、各支点に伝わってしまう。

4ピン目で、200kgの衝撃を吸収

3ピン目で、100kgの衝撃を吸収

2ピン目で、50kgの衝撃を吸収

1ピン目で、10kgの衝撃を吸収

 2 × 3 × 3 =18分の1

オイラーの法則は、足し算ではなく、掛け算で働くため、下にいるビレイヤーには、墜落の様子が分からない、ということになってしまう。つまり、制動確保にはならない。














■ 確保器について

どういうルートに行くかによって、確保器を使い分ける。

例: 穂高の岩場で、8mmダブルで10m落ちる 


  ATCガイド  無雪期 ×  積雪期 NG
  ルベルソ   無雪期 〇  積雪期 〇

ATCとATCガイドでも、これくらい径が違う。

ATC = スポーツクライミング用

ATCXPガイド=ダブルロープ、つまりアルパイン用である。











■ 参考

http://www.alteria.co.jp/sport/technique/Rock-Climbing-Fall-Factor-and-Impact-Force/

http://www.lostarrow.co.jp/support/ti_133.html

国立登山研究所 確保理論

オイラーの法則

ロープ一本で自分を持ち上げる

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